2015/08/28

東京ヴェルディ1969×愛媛FC - ヴェルディの攻撃を中心に

2015/8/23 東京V 0-1 愛媛

得点者:西田(愛媛)
(Jリーグ公式へのリンク)
(下から上に攻撃(緑)がホームの東京V)

○試合の見どころ

3位と6位のプレーオフ圏内対決。
勝ち点を積み重ねる意味でも、ライバルの勝ち点を奪う意味でも、勝ちたい両チーム。
開幕前の予想を覆して躍進する2チーム。
5連勝したが前節徳島に敗れた東京Vと4連勝の愛媛。
経営危機ばかりが話題になりがちがこの2チームが
プレーオフを争って上位対決する日が来るとは・・・。


○ヴェルディの攻撃 - ずっとヴェルディの攻撃

4231のヴェルディは両CBが広がってボールを落ち着かせる。
相手が1トップなのでDMFのヘルプも特に必要としない。
対する愛媛は中央を絞った343。
この2チームが対峙したときにヴェルディの狙いは次の感じ。
両WGの脇とCBの脇。
愛媛は専任が1人しかサイドにいないのに対して、ヴェルディは2人。
そりゃそーだよね。
じゃあ愛媛はどうするかというとWGが下がる。
これで442が完成するっちゃそうなんだけど、
FWの選手がSBの守備に追われてしまう状況。
SBに優秀な選手がいるヴェルディは相性悪かったのかもなーと。
ずっとヴェルディのターンな試合でした。

ヴェルディのパターンは1トップのサイドへの流れから。
またかよ「サイドの3人目」。
僕はこれしか目に入らないんだろうか(たぶん、そう)。
でも効いてるんだからしょうがない。
ヴェルディの場合は、サイドで受けることが目的じゃなくて、
開けたスペースを利用することの方がやりたいことのように思えた。

これに対して愛媛は頑張って対応。
DMFが頑張って戻る。
シンプルだけど重要な動き。
愛媛は人海戦術でギリギリのところでなんとか跳ね返す。

なお、ヴェルディのえぐいところはWGが中央にもポジショニングすること。
こんな感じで、"間"にポジショニングすることで相手の基準をずらして、
チャンスメイクしたりもしていた。
まー、SMFの役割を言うならば、なんというかフリーダム。
「優秀なSBがいるから、WGが基準をずらしてSBがフリーに出来たらいいよね」
そんな計算なのかもしれない。


○愛媛の攻撃

愛媛については、攻撃面でいいところはほとんどなかった。
愛媛が基本的にやりたいのは、昔の図を流用してこんな感じ。
WBから3トップへの放り込み。(またはサイドチェンジ)
これをするにはWBがある程度高い位置でボールを持てて、
3トップもゴール前に迫っている必要がある。

ただ、この試合では自陣深いところまで攻められてしまい、
ときには541にまで押し込められる展開。
1トップは孤立し、さらに相手の早いプレッシングと高いライン。
落ち着いてボールは持てず、WBも3トップも、ここまで上がれることがほとんどなかった。

でも、球が人にあたったりなんなりでなぜだか前進できた数少ない場面で、
内田の左足から河原のヘッドが炸裂。
ポストに当たるが、西田がごっつあん。
ほとんどチャンスがない中で、愛媛の得意武器が一閃して勝利。
わずかなチャンスでも相手を斬りつけられる、十分に磨きぬかれた武器だったということか。


○本日のまとめ

J2は中断期間に入る。
これが吉と出るか凶と出るか。
1リーグ制J2の道のりは長い長い。

2015/08/27

サガン鳥栖×横浜F・マリノス - 修正の見えたサイド攻撃と俊輔トップ下

2015/8/22 鳥栖 1-2 横浜FM

得点者:谷口(鳥栖)、伊藤(横浜FM)、ファビオ(横浜FM)
(Jリーグ公式へのリンク)
(下から上に攻撃(水色)がホームの鳥栖)

○試合の見どころ

ひたすら勝てなかったマリノス。
ここで勝てなかったらどこに勝つという気持ちで臨んだ清水戦で敗戦。
しかし、代表ウィーク明けにまさかの2連勝。
ここで一気に勢いに乗るために連勝を伸ばして、俊輔と優勝するための希望をつかめるか。
一方、勝ったり負けたり分けたりの鳥栖。
ただし、地味にホームで5/20以降勝てないのが続いている。
そろそろ勝ちたい鳥栖。


○横浜の攻撃 - ついに出たSBの活用

結果的に逆転勝ちという結果にはなったし、危ないシーンもたくさんあったけど、
マリノスは、ボールをコントロールし、能動的にボールをゴール前に運べていた。
もちろん受動的にゴールを狙うことが悪いとは言わないけど、
再現性をもってゴール前に迫れていたのはマリノスの方だと思う。
そういう意味で、個人的には結果にあらわれている以上にマリノスの勝ち。

望んでいたSBを絡めてのビルドアップが見られた。
この試合については、この1部分だけの振り返りだけでよいかと。
マリノスがCBがボールを保持したときの形を、いままでとこの試合で比較するとこんな感じ。
左がいままで、右が今回。
違いはSBの位置とCBの開き具合。


いままでのマリノスはCBをひらかせてFWのプレッシングを回避する作戦を取っていた。
しかしこの形の場合、ファビオと中澤に攻撃の起点をお願いする事になる。
もちろん、本人らなりに進化はしてるんだけど、なかなか形にならなかった。
一方、マリノスはSBが優秀。
両サイドともにかなり高いレベルのSBをそろえているのはマリノスの強みのはず。
それをうまくつかわないことに長いこと不満だった。
けど、ついに修正されましたよというお話。


相手が442の場合、2トップの両脇が空く。
そのスペースをSBが活用しましょうという話。
この陣形から発生していた形は以下。
SBにボールを渡す。
→相手SMFが(しょうがなく)プレッシングにいく
→その空いたスペースにWGが下がって、相手SBもついてくる。
→その空いたスペースにトップ下の俊輔が"サイドの3人目"として流れる


もちろん、対策もありえて
「SBをほっとく」とか「SBが持つ前にマークについてCBに蹴らせる」という対策もあるけど、
それに対する対応も作ってあった。
SBがほっておかれたら、相手SMFと相手SMFの間に位置したWGにパスを通す。
出し手にプレッシングがかかっていないので、裏取られるのをおそれてSBは前に出にくいので、
わりと簡単にこの位置でボールをもらえる。
そうなると、ここでボールを持つのが齋藤学やアデミウソンなのだからそれだけで十分脅威。
(もちろん場合によってはSBからDMFというパスルートもありえる)
SBにマークつかれた場合でも、はじめのパターンとやることは基本的に同じ。
広いスペースがあるから難易度も低いし、リスクも少ないしで、CBが直接トップ下にボールを蹴る。

そして、これら全部できなかったら、無理せず「前線に放り込む」

むっちゃ再現性が高かったので、狙ってやっていたと思われる。
こんな感じで、対策に対する対応までもしっかり準備されているように思えた。
いつの間に・・・


CBによるビルドアップの場合、CBが出し手として不十分なところがあるため、
トップ下の俊輔が出し手となるためにボールをもらいに下がる場合が多かった。
そしてその場合、前線でFWが孤立するというのがマリノスの問題としてずーーーっとあった。
それを問題視したのが現監督で、トップ下が前線近くにいることを要求し、
そのためか俊輔はスタメン落ちするようになっていた。

しかしこの試合では、「日本有数の両SBを有効活用」し
「トップ下の俊輔が下がらずにボールの受ける方法を用意」されていた。
2つの悩みを同時に解決!!!

これがいつまで通用するかわからないけど、
個人的にはすごく手ごたえを感じた会心の試合でしたよ。


○本日のまとめ

次節、浦和戦。
5バックに同じことは通用しないのでどうするか。
広島戦からミシャ式対策の進化はあるのか。
モンバエルツの手腕が問われる。


○本日のおことば

 「サイドの3人目」

2015/08/19

栃木SC×横浜FC - 進化途上(?)の栃木SCを中心に

2015/8/16 栃木 2-1 横浜FC

得点者:荒堀(栃木)、松下(横浜FC)、河本(栃木)
(Jリーグ公式へのリンク)
(下から上に攻撃(黄色)がホームの栃木)

○試合の見どころ

降格の危機により監督を交代した栃木。
倉田新監督は442ゾーンディフェンス一派と言う話で注目。
就任以降は勝ち→分け→負け→負けといまいち調子が出ないが、
前節はダントツ首位大宮に惜敗ということで、戦術の浸透を感じさせる。
そろそろ結果が欲しいところ。
対する横浜FCは中位であるが5連敗中。
せめて勝ち点を取って自信を取り戻したいところではある。


○栃木の守備 - 蹴らされた横浜FC

横浜FCは3バック。
ブルータスおまえも3バックか・・・。
攻撃時はWBが高く位置し、両サイドCBが大きく開いてプレッシングの回避する。
どっかのミシャ式と似たような感じ。
攻撃の起点は大きくひらいたサイドのCBから。
2トップの走る距離が遠くなるため、プレッシングにいきづらい。

そこで栃木。
SHがプレッシングにいく。
かなり高い位置でもプレッシングに行っていた。

高い位置からのプレッシングの弱点は、背後にスペースができること。
そこを横浜FCのWBも引いてもらいにいったりもするが、
栃木はここでもしっかり対処をする。
SBが空いたスペースを埋め、SBが空いたスペースはDMFが埋める。
再現性がアリアリだったので、試合前に決められたことだったのだろう。

横浜FCは栃木の連動した守備の前に効果的なビルドアップが出来ず、
結局CBから前線に放り込みをすることに。
栃木の1点目はCBが出しどころを失ってパスミスをしたところをカウンター。
狙い通りの1点だったのかもしれない。

CBの浮きだけでなくてDMFも絡めた人数差で前進できればいいんだけど、
そこまでは出来ない様子。
ミシャ式"っぽい"だけで、真似ることもできてないあたりが迷走を感じさせる。


○栃木の攻撃

栃木の攻撃は442の体系は崩さずに行われる。
対する横浜FCは541で迎撃。
この守備もどこかでみたことあるような・・・。
栃木はシンプルにSBから攻撃をはじめる。
FWの両脇あいてるから、比較的時間がもらえるSBという単純な計算か。
ただ、そこから特別な狙いや形があるような感じもなく、
単純なロングボール放り込みも多かった。

そこで、その中で興味深かった5バック崩しの1シーンを紹介。
SBに対しては、横浜FCはWGがプレッシングに行き、
WBは相手SHをチェックしているのが基本。
そこでSHが動く。
中央に引いてWBを引っ張り出す。
→空いたスペースにFWが流れ、CBを引っ張り出す。
→CBとCB間に飛び出していく。
という狙い。
(実際には2番目の段階でCBにつぶされたので未完)
決まれば素晴らしい展開だったかと。

このシーンでもそうだけど、
試合全体を通して栃木は、「サイドは3人目が必要だよね」ということが共有されている感じなので
進化途上であることを感じさせてくれたような気がしなくもない。


○本日のまとめ

スコア(2 - 1)やシュート数(6 - 6)ではあらわれないけど、
栃木の方がかなり優勢な試合だったというのが僕の感想。
適切なところに選手を配置し、タイミングよく囲むシーンも目立っていた。
ゾーンディフェンスというものがもっともっと浸透するとするなら、栃木は今後もおもしろそう。

しかし、栃木SCは
「スタジアムに陸上トラックがない(芝はアレな感じだったけど)」とか
「メインスタンドのお客さんもタオマフかかげる」とか
「勝ったら選手もみんなで肩組んで"県民の唄"を合唱」とか
地元の人は応援してて楽しそうなチームだなーとか思いました。
暑苦しい倉田監督のキャラともあっている気がするので、
長くやってもらってよい成績残して、
地域にサッカー文化を定着させてくれたらなーとか、外野ながらに思ったりしてます。

2015/08/12

V・ファーレン長崎×コンサドーレ札幌 - 3バックvs3バック

2015/8/8 長崎 0-0 札幌

得点者:
(Jリーグ公式へのリンク)
(下から上に攻撃(オレンジ)がホームの長崎)

○試合の見どころ

予算規模が比較的小さくとも一定の結果を残し続けている高木監督率いる長崎。
今期も試合前8位とプレーオフを狙える位置につけている。
一方、札幌はプレーオフを目指して監督を交代したが、
ブーストが効かずに足踏み状態。
プレーオフ圏内を争う2チームの戦いはいかに。

なんとなく選んだ試合だったが、たまたま3バック同士の戦いとなった。
同じ3バックでもちょっとした違い(343と3412)で、展開も左右されたのが興味深い。
3バック対決なんてそんなに見ることねーだろ、
と記事の需要に疑問を感じつつ、はじまりはじまりー。


○札幌の攻撃

3バックにありがちな、両サイドが開くパターン。
定石。
相手は3トップになるのでDMFを一枚落として4vs3を形成し、ボールを保持する。
長崎はプレッシングをかけるというより、
"しかるべきポジションで待って"、"引っかかる"のを狙って、"カウンター"を待つ。
(プレッシングをかけれる距離の場合、FWとWGが連動して外に追い込む場面もあった。)
ただし、フリーで持てるCBからわりと効果的なパスが出ており、
引っかかる場面をそこまでなく、札幌がボールを保持しつつ効果的に攻める。
これは最終的なシュート数が、【長崎5vs札幌20】になったことにも表われたとおもう。

興味深かったのはトップ下の効果。
札幌はトップ下を置く布陣を採用しているため、
長崎から見ると、「2トップは3バックで見るとして、トップ下どーする?」という感じ。

そこで、このトップ下を経由した攻撃がうまくはまっていたと思う、
相手DMFがプレッシングに前に出た場合には、その空いたスペースを狙ったり、
上述の、バックラインでの4vs3での前進が上手く行かない場合には、
そこまで降りて5vs3にして時間を作ったり。
長崎は相手のポジショニングにそこまで振り回されない意思を持っていたけど、
跳ね返すのが精一杯という感じの試合展開。


○長崎の攻撃

長崎も3バックでDMFが一枚引いてくる形。(図は割愛)

興味深かったのはFWの横流れ。
WGが引いた位置でボールを受け、空いたスペースに1トップが流れる。
結構な頻度で見られたので、練習しているのかも。

しかし、この攻撃は不発。
札幌にとって見れば、「3トップに対し3バックだから、トイメンつぶせばいいんでしょ」という感じか。
躊躇なく中央のCBがサイドに流れて対応する。

4バックならCBがそこまで流れるべきかの判断が迫られるんだろうけど、
3バック相手だからかうまくいかない。
そんな感じで、パスの受け手が相手とポジションがかみ合ってしまった長崎は、
うまく前進できずに放り込む展開を続けてしまう。
苦しい長崎。

そしてついに動いた70分ごろ。
サイドに開いたCBの持ち上がり。
「相手が受け手をつぶしにくるなら出し手が上がればよくね?」
3バックは必然的にサイドの人数が1人になる。
じゃー、開いたCBが上がったらチェックする人いないよねと言う話。

この手を機に一気に混乱を生み出した長崎。
この時間までこの策をひっぱったのは、
ボールロストしたときに後方に控えるのがDMFになってしまうからか。
もう少し早い時間にやってればおもしろかったとは思うが、
敵味方含めての混乱な感じだったので、あくまで緊急時の手段だったのだろう。


○本日のまとめ

ゾーンを守るような長崎と、マンツーで守るような札幌。
札幌の選手がやりやすそうに見えたのは、
日本ではゾーンマンツーが基本だからというのは気のせいか。

しかし、お前らも3バックなのかよ。
ミシャ式含めてJリーグって3バックの存在率が高いんじゃ・・・。
もしや、これがJapan's wayなのか!?そうなのか!?

2015/08/07

日本代表×韓国代表 - ハリルホジッチの計算結果とは?

2015/8/5 日本代表 1-1 韓国代表

得点者:チャン・ヒョンス(韓国)、山口(日本)
(JFA公式へのリンク)
(下から上に攻撃(青)が日本代表)

○試合の見どころ

北朝鮮代表に敗戦となった日本代表。
お次の相手は韓国代表。
一戦目を見たハリルホジッチはどういう計算をしてきたか。


○日本の守備 - ハリルホジッチの諦め

日本は前の試合は4231にしていたが、今回は藤田を中盤の底に置いた4141。
柏木の代わりに追加召集をした藤田が中盤の底なら、
スクランブル体制として選んだ布陣をにおわせる。

韓国はCBが広めに開きつつ、DMF二枚のどちらかが下がったりしながら、
CB2枚+DMF2枚の4枚で前進する。
対する日本は興梠のワントップであり、プレッシングをしても無駄だし、
ハーフライン付近までは前進を許す。
前プレ発動しがちなのが日本の芸なので、多分監督の指示。
ただし、どこまでも放っておくわけにもいかず、相手DMFが持ったときに、
DMFがプレッシングをかける。
この瞬間を常に韓国は狙っている。
狙っているのはプレッシングをかけたDMFの裏。
トップ下が入り込み裏のスペースを狙う。
韓国はバックラインでのパス回しはひたすらこの瞬間を狙っている感じだし、
選手交代があっても再現していたので、
この形はむっちゃ練習している。

これに対応する日本。
このために中盤の底に藤田がいる。
442なら、「CBのどちらかがチェック」とか「プレッシングと連動して中盤が絞る」とか必要だけど
4141なら対応が簡単。
ハリルホジッチは日本代表のメンバーにそれができない判断して、
藤田を中盤の底に置く布陣をしたのではないかと。
韓国の試合を見てパターンを見つけ、
現有戦力でパターンに対応する方法として選択した布陣だと僕は解釈しております。

ちなみに韓国はもう一個パターンがある。
WGが絞って同じ場所を狙う。
この場合、トップ下には藤田がついており、チェックにいけない。
しかもSBがあけたスペースに走りこむおまけつき。
日本はこれをやられると結構厳しかったけど、
これはあまり回数は見られなかったので、練習途中とかなのでしょうか。


○日本の攻撃 - ハリルホジッチのもう一つの諦め

おそらく攻撃に関しては、時間の都合なのか、何も手を入れてないように思われる。
日本の攻撃はCBが持ったときは藤田が下がって相手ツートップと3対2を形成。
 
しかし、プレッシングを回避できないのか前進できない。
とにかく出しどころを探しているけど、みんな捕まってる。
柴崎が下がったりSBが下がったりしていたけど、
むしろ狭くなり、むしろ出しどころを失うような感じ。

CBが持ち上がる展開は何回か見れたけど、再現性はなさげ。
せっかく足技のうまいGK西川なのに、GK使ってプレッシングを回避する姿勢も見せない。
トップに競り合いの強い選手がいるわけでもないのに、ゴールキックはロングキック。

これらから考えて、監督は攻撃に手を加えてないんじゃないかと。
もはや、相手がセットした状態からの得点は考えていないというのが僕の解釈。
これはこれでハリルホジッチの諦めのひとつ。


○本日のまとめ - ハリルホジッチの計算結果とは?

・守備について
44の2ラインで守ることもプレッシングを連動させることも現段階では不可能。
 → 4141にして、スカスカの中盤のフィルタリングをアンカーで帳尻あわせ。
・攻撃について
守備の建て直しで精一杯で、攻撃をコーディネートする暇が無い。
しかも日本人は共通の文法を持たない。
 → 静観。蹴っ飛ばしてとにかく前進するのがせいぜい。
・得点の取り方について
共通の文法を持たない日本人ではあるが、テクニックと瞬間の判断には優れている。
 → 相手が完全にセットしていない中では、先手を打った攻撃をすることができる。
 → 守攻の切り替えで得点を狙おう。
 → そのために両サイドに速い選手をおいて、局面で人数が揃うようにしよう。

僕はハリルホジッチ監督を好意的に見ているので、こういう解釈をしました。

2015/08/03

愛媛FC×セレッソ大阪 - 愛媛の343を読み解こう

2015/8/1 愛媛 2-1 C大阪

得点者:関口(C大阪)、内田(愛媛)、川原(愛媛)
(Jリーグ公式へのリンク)
(下から上に攻撃(オレンジ)がホームの愛媛)

○試合の見どころ

磐田に勝って4連勝し、自動昇格圏まで3ポイントと勢いに乗るセレッソ。
一方、粉飾決算が明るみに出てクラブの運営が厳しいとされる愛媛。
そんな中でもチームは結果を出しておりプレーオフ圏内まで6ポイントの10位。
両チームとも勝敗によっては今後のチーム状況も左右しそうな試合。


○試合展開

セレッソは先制したものの、効果的に前進できない。
シュート数自体同じではあるけどセンタリング含めると効果的に攻めてたのは愛媛かなと。
後半に内田のスーパーシュートと終了間際の川原のアディショナルタイムの劇的なゴールで
愛媛が今シーズン最多入場者数(7177人)の試合を逆転勝利。


○愛媛の攻撃 - とにかくわかりやすい愛媛の攻撃

愛媛の攻撃は広がったCBからはじまる。
広がることで2トップの走る距離を増やし、
プレスを受けないように安定的に保持した上で前線にボールを供給する。
CBの持ち上がりはあまりなく、前線に放り込むか、可能なら縦パスをいれる。
"崩し"にあまり執着はない様子。

執着があるのは次の形。
とにかくWBを生かすのが攻撃のメイン。
例えば、図のようにCBからの展開を嫌がってSMFがプレッシングに行くと、
簡単にWBに預けてそこからアーリークロス。
SBがプレッシングが遅れやすい微妙なポジショニングがポイント。

難しいしかけはあまりしない。
基本は横からの放り込み。
中央には3人控えているので
キーパー除いたら敵味方同数の状態でに簡単に勝負できるんだから
そこに仕掛けるのって効率いいよね。
そんな計算なのかもしれない。
まー、アーリークロスは攻撃側の競り合い勝率が基本悪いはずだけど、それは別の話。

えぐいのがサイドチェンジも狙ってること。
DFは左右に視線が揺さぶられマークを見失いやすい。

この試合も、1点目はサイドチェンジのボールをダイレクトボレー。
2点目はアーリークロス気味のボールをヘディング。
結果にも出てるように、愛媛の攻撃の基本はWBから繰り出された。


○愛媛の守備 - 7枚であることをどう隠すか

愛媛は343のフォーメーションであるので、中盤とバックあわせて7枚しかいない。
7枚であることは34か43の2ラインと言うこと。
サッカーのフィールドの横幅は3人で守るのはどうやっても広い。
それを誤魔化すために必要なことは、サイドチェンジを出させないこと。
ということで愛媛の守備の基本は、一度サイドに回させたら中央を固めること。
というわけで縦長のこんな陣形になる。
特徴的なのが愛媛のWGの位置取り。
まずは、SBにプレッシングに行くのでなく、まずは中央に位置取る。
というわけで図にも示したようにセレッソはわりとSBは余裕をもってボールを持てていた。

かといって放っておくわけにもいかないからプレッシングにいくんだけど、
この暑さでもWBにプレッシングにいかせる。
サイドチェンジのキーになる相手DMFは1トップやWGが徹底的にケア。
WBのこの運動量はエグイ。
でもWBにいかせる。
そんぐらい中央はいかせたくない象徴だろうか。

それでも前進されてしまう場合があるんだけど、その場合はこうなる。
3バックにありがちなスライド。
近いほうのCBがSB化してWBが戻る。
図でも描いたとおり余裕があればWGが戻る。
これで44の2ラインが完成。

この愛媛守備に対するセレッソ。
僕が気付いたのは2通りの打開パターン。

一つ目は玉田。
2ラインの前に出たり、ボランチ脇に出没したりすることでボール循環を促進。
これが監督の指示か個人の判断かはわからないけど、
後半途中で交代してしまったので、盤面が見えてたのは玉田ぐらいだったのかもしれない。
にしてもパブロは何をしていたんだろう。。。

二つ目の手は途中交代。
同点にされた直後にDMFをもう一枚入れて442ダイヤから通常の442に変化する。
こうすることでSBがボール持ったときに誰がチェックに行くのか
対応を迫る狙いだったのではないかと思う。
ただ、同時に玉田も下げてしまったからか思うように機能しない。
なんで交代させたんだろう。
そうこうしているうちに逆転されてしまったセレッソでした。


○本日のまとめ

愛媛の343は定点観測しても面白いかもしれない。
(あくまで「相手チームがいろいろな指し手を打ってくれば」だけど)
J2にはいろいろなサッカーが生きている。
魔境J2。

2015/07/31

横浜F・マリノス×清水エスパルス - 勝てないチームの勝てない相手

ネタが思いつかない。
それでも書く。
そこに時間がある限り。

2015/7/29 横浜FM 1-2 清水

得点者:齋藤(横浜FM)、大前(清水)、大前(清水)
(Jリーグ公式へのリンク)
(下から上に攻撃(青)がホームの横浜FM)

○試合の見どころ

5/16からリーグ戦で勝ってないマリノス。
相手は5/10からカップ含めて勝ってない清水。
双方ともに勝ちたい対決。
奇しくもマリノスが5/16にリーグ戦で最後に勝った相手は清水。


○試合展開

マリノスがボール保持。
裏抜けからマリノスが前半に先制。
しかし清水は後半に攻勢を強め、カウンターから2点で逆転。
清水は年間順位で最下位脱出。


○マリノスの攻撃とエスパルスの守備

マリノスは2トップの守備に対してCB2枚+DMF2枚の4枚で前進のよくある形。
一方のエスパルスは442で44のブロックを作って対応。
また、清水の守備の特徴は超攻撃的守備。
相手陣であろうとかまわずプレッシングをかけにいく。
MFが。
こんな感じ。
相手陣でのMFプレッシングは、DFラインがハーフラインという制約がある以上、
2ラインの間が空いてしまう。
清水としてはボールを奪いにいっているつもりかもしれないが、
マリノスとしてはスペースのあるところで2ラインの間でボールが持てる。
正直なところ、マリノスがチャンスを作れた場面は、
このMFによる前線のプレスをかわした場面で多かった印象。

ただ、基本的には前述の通り中央4枚での前進が染み付いているマリノス。
SB下平がこの点に気付いてか、CBの高さまで引いている場面も何度か見たけど、
それを活用することなく中央から前進をするマリノス。
前進した先には狭くなった2ライン。
清水はDMFへのケアを強くし、フリーで持てるのはCBのみ。
そこから効果的なパスが出せないという、いつもの展開。
(三門と兵藤もボールを持てるシーンもあったけど、そこからもパスは出ない)

相手の高いラインに、裏を狙う場面もいつもよりは目立ったが、
受ける側がアデミウソン、俊輔をはじめとしてスピードの不足を露呈。

パスを得意としない後ろの面々がボールを持ち、スピードの無い前線が待つという
自ら袋小路にはまりに行ったかのような展開だったように思う。

トップ下の俊輔がDMFの位置に下がってポジションチェンジをしたりしたのは、
そういった状況を打開しようとしたのではないかと。
じゃー、はじめから俊輔がDMFで、裏抜け得意な三門がトップ下で良かったじゃん、
という話では落ち着かないのが人間の感情でありその総体であるチームであるということ・・・。


○エスパルスの攻撃とマリノスの守備

清水の攻撃の基本はカウンター。
なので図はなし。

ボールを保持して前進しようという試みも見られたが、
整理されていないのか、途中で止められる場面しかなかった。
むしろ後ろから蹴ってチョンテセにあてて大前が拾うという形のほうが、
よっぽどチャンスになっていたように思う。

カウンターの場面で、「これでもか」という具合に要員を走らせる清水に
マリノスは後手後手。
急いで形を保とうとはするんだけど、相手にあわせた形にまではもっていけず、
特に足の止まった後半はおもしろいようにやられるような展開。

こうなった原因として考えられるのは、
ボールを保持したいマリノスは
攻→守の場面ではボールを取り返すことを優先にして人を集めるということ。
人をボールに集中させるということは、
そこを抜けられた場合に、陣は崩れており帰陣も遅くなるということ。
もちろん「ボール<帰陣」が絶対的な解ではなく、ボールに人を集める解も正しい。
ただし、ゾーンより人へのチェックを優先するなら
絶対的な人数が足りないと対応できない。
守→攻でこれでもかと人を投入するエスパルスに、
暑さと過密日程で戻る人数と速さ(早さ)を確保できなかったマリノスが
後手後手になったのだと思う。


○本日のまとめ

なんだか負けるべくして負けたのだと思う。
今回の陣容なら勝てない相手ではあったのかなと。

ただ、勝つ方法がなかったのかといわれるとそうでもなかったという断言。
「相手なりのやり方」というのは、どうやったらできるのでしょうか・・・。

2015/07/30

東京ヴェルディ1969×京都サンガF.C. ー 分かりやすさの重要性

思えば遠くへきたもんだ。
三日坊主は越えた。
継続は力なりなんだけど、続けていく自信はない。

2015/7/26 東京V 1-0 京都

得点者:高木大(東京V)
(Jリーグ公式へのリンク)
(下から上に攻撃(緑)がホームの東京V)

○試合の見どころ

いつの間にかプレーオフ圏内に入り込んでた好調ヴェルディ。
このままプレーオフなら正直ダークホースだけど、好調の秘密とは。
一方、前任の監督を解任して解任ブーストをかけたい京都。
両チームともユースから昇格した若手に定評のあるチームでもあり、その差も見てみたい。


○試合展開

ボールはあまり落ち着かず行ったり来たり。
完璧な崩しのシーンもさほど見えず両チームの若さも見える荒削りな展開。
後半途中に裏への抜け出しからPKを取ったヴェルディの勝利。


○京都の攻撃とヴェルディの守備

京都はCBが開いてDMFが1枚戻る、もはやオーソドックスと言っていい形。
相手FW2枚に対してCB+DMFの計4枚でボールを安定させて前進させる。
(図はヴェルディとの比較の都合により、ボールをサイドでもたせてます。)

対するヴェルディは442で守る。
CBが開ききれないorDMFのフォローが間に合わなそうなら、
ツートップな頑張って、キーパーまで追っかけたりしながらボールを蹴らせる。
これももはやオーソドックスと言っていいのかも。
にしてもヴェルディのFW若いからか、走ること走ること。


○京都の守備とヴェルディの攻撃

京都の守備はヴェルディと同じなので省略。
でも、ヴェルディの攻撃は京都と同じではない。
ポイントはSBの位置取り。
というより横幅担当の役割分担が明確というべきか。
WGは必ず中に入りSBが外に行く。

京都もこれに対してSMFが対応するのを基本として
規律ある守備はできていたけど、後手を踏んでいたのは確か。
落ち着きがない中でも役割を明確にして確実に遂行していく。
それがヴェルディの勝利に結びついたんじゃないかと。


○本日のまとめ

京都とヴェルディ、やり方も若さも似たようなチームだけど、
結果をわけたのは「横幅はSBの担当」という分かりやすさだったのかなと。
京都はWGが広がってみたりSBが走ってみたりその辺は曖昧でした。

もちろん曖昧で即興重視でもいいんだけど、それで迷いと混乱を産むなら本末転倒。
特定のパターンがあって対応されて、別のやり方やって対応されて、
そういうのを繰り返して武器を増やしていって、
やっと即興とか駆け引きができるんじゃないかなと。


○おまけ

最近の試合の見方。
もはやBlogのネタばらし。
誰もがここを見るなら僕の役目は終わる感じ(?)。
このスペースにどうやって進入するかを見ております。
そればっかり見てる。
楔のパスって言われるパスで中央バイタル狙っても守備側も寄せが早くて、
ダイレクトプレーがポンポンポーンぐらいでぐらい3つ以上繋がらないと駄目。
通れば効果は高いけど確実性がすごく低い。
それよりかは、このスペースはそこよりも警戒は薄いから抑えられる場面が多い。

ここもある種の2ラインの間だから、
ゴールから遠いようで実はここからなんでもできる。
縦や中にドリブル勝負もよし、
横パスでバイタル狙ってもよし、
縦パスで前進狙ってもよし。
縦走りでCB誘導してトレーラーゾーン狙ってもよし。
本当になんでもできる。

このゾーンって名前ないんですか?